当レポートでは、我が国の技術力の国際的なポジショニングを示す客観的な数字をご紹介致します。
(出典:25年版技術白書)
我が国経済の伸び悩みと新興国の台頭の結果、我が国経済の存在感が低下している。その一つの例を我が国が得意としてきたハイテク産業の貿易比の動向に見ることができる。
我が国のハイテク産業の輸出と輸入の比率が80年代後半をピークに下がり続けていることが、以下のグラフより見てとれます。
2002年以降のハイテク産業の輸出額全体における我が国の占める割合も一貫して低下しています。
次に、研究活動により産出された成果や科学技術活動の基盤の動向についての数字をご紹介します。
研究活動を定量化する代表的な指標として、量的な指標である論文数や、質的な指標である被 引用数などがある。
量的な指標である論文数について、我が国は80年代に比較してわずかに増加しているものの、 中国をはじめとした各国の論文数が我が国とは桁違いの勢いで増加している。そのため、相対的なシェアは落としている。
また、質的な指標である被引用数についても、被引用数が上位10%に入る注目度の高い論文 の数(トップ10%補正論文数)や、被引用数が上位1%に入る注目度の非常に高い論文の数(トッ プ1%補正論文数)においても、世界シェアが低下傾向を示している(第1-1-14図)。
このように、研究論文の量、質的の該当数について、我が国は着実に増加させているものの、 他国の伸びはこれを大幅に上回ることからシェアや順位を落としており、世界の研究活動におけ る我が国の存在感の低下が示唆される。
論文数、論文被引用数と並んで研究活動から得られる成果に関する指標として、特許に関する ものがある。
我が国からの特許出願件数は、45万件を超える規模であるが、2000年代半ばから漸 減傾向にある(第1-1-16図)。減少の背景としては、研究開発費が横ばいとなっていることに伴い、 企業等が出願する特許を厳選していること、国際出願を重視していること等が考えられる。
特許 庁では、研究開発結果の早期活用やグローバルな視点に基づいた権利化戦略など我が国の知的財 産戦略の強化を目指して、任期付き審査官の確保を含めた国の審査体制の整備による審査の迅速 化を進めている。
企業による国際特許出願件数ランキングを2006年と2011年で比較すると、トップ10社の 特許出願数が増加しているとともに、我が国の企業が2社から3社に増えるなど国際特許出願を 加速させている状況が見られる。
一方、中国と韓国の企業は2006年には10位以内には1社も入っ ていなかったにも関わらず、2011年には両国合わせて3社が入っており、特許に関しても、中国 及び韓国の躍進がうかがわれる(第1-1-18図)。
技術等を利用する権利を、対価を受け取って外国にある企業や個人に対して与える「技術輸出」 と、逆に対価を支払って外国に居住する企業や個人から権利を受け取る「技術輸入」(技術導入) を合わせた「技術貿易額」も、技術の国際的な競争力を示す指標として用いられる。
1991年以降、 欧米諸国及び韓国の技術貿易は輸出・輸入とも増加傾向にあり、我が国も同様の傾向にある。
また、技術貿易収支比(技術輸出額/技術輸入額)について見ると、日本の技術貿易収支は、1993 年に1を超え、継続して増加傾向にあり、2010年度の値は4.6と、高い数値を示している(第1-1-19 図)。
次に、我が国の研究費の推移と政府の負担割合の推移をご紹介致します。
主要国等における研究費をOECD購買力平価換算して比較して見てみると、米国が最も大き く46.3兆円、EU加盟27か国は33.9兆円、中国の19.9兆円となっており、我が国はこれらに次い で17.1兆円となっている。
研究費の推移を見ると、我が国は1980年以降増加傾向にあるものの、 急激に研究費を伸ばしている中国には、2009年に追い越されている状況が見て取れる。
また、研究費の国内総生産(GDP)に対する比率を見ると、我が国は1989年以来、主要国中で最高水準 を維持してきたが、2008年から2年連続で減少し、2000年代に入って大きく伸びてきている韓国 に2010年から追い越されている。また、中国の伸びが顕著である状況も見て取れる(第1-1-20図)。
我が国の研究費の政府負担額について概観すると、米国、EU加盟27か国、中国に次いで、3.3兆円を政府で負担しているが、米国や、EU加盟27か国、中国など政府負担を増加させているのに対して、 我が国は近年研究費の伸びが停滞している状況にある(第1-1-21図)。
世界においては研究開発費の7割を企業が負担しており、その動向を概観すると、企業等の民間が負担する研究費については継続的に増加傾向であったものの、2008年のリーマンショック以降落ち込んでいる(第1-1-21図)。
(出典:25年版科学技術白書)